東京天竺とは、文化学院小説ゼミの有志で始めた同人誌。小説やエッセイ、漫画などを掲載。詳しくはカテゴリ『東京天竺1号』『東京天竺2号』ご覧下さい。


by tokyo_tenjiku

勝手にロックンロール 第二回 

勝手にロックンロール二回目の更新です
 さて、なんの気はなしにこのコーナー名を勝手にロックンロールとしたのですが、ヤフーで勝手にロックンロール、と検索するとイナズマ戦隊というグループがすでにそういうタイトルのCDを出していました。ごめんなさい。
 ではでは、前置きはこれくらいにして、小説をおたのしみあれー。
  (一部、前置きと形式を変更させていただきました。以前は曲名とグループ名、その歌手についての高橋の思い入れなどを最初に提示する形式をとらせていただいていたのですが、あまりにも個人勝手な趣味である事で読者を選んでしまっているようなところがあったため、今後は小説の最後に曲名や歌手名を発表する形をとらせていただきます。小説自体に、私自身のオリジナルのタイトルをつけていきます。歌手名にピンとこない方でも純粋な短編小説としてお楽しみいただければ幸いです。)




第二回 『世界は白くない』 
 
 ジリリリリリリリリッ――
 パチリと、目を開けた。
 白い壁が四方にあってまるで独房のようだ。でも僕たちは何かをしたわけではない。なのにここにいるんだ。
部屋は南に窓がある。北にドアがある。東の壁にはカレンダー。西の壁にはデジタル時計が埋め込まれている。真っ白い机と白い布団と白い枕と、真っ白いトイレと、真っ白い外側からしか開けられない、ドア。ノブのないドア。
 バタンッと、ドアが開けられて、今日の仕事がドスンっと投げ込まれた。重量感があった。少しだけわくわくする。なんだろう、と投げ込まれた麻の袋を覗き込む。大量の新聞紙。
 今日は新聞読みか。
 久しぶりだし、世の中のことも分かるし、まぁ悪くはないな。
 バタンッジャララッ
 ドアの外の廊下から同じような音が少し遠めに聞こえる。すぐ隣で、同じように今日の仕事が放り込まれたのだろう。壁に背中を貼り付けて、耳を当ててノックする。
「おはよう」
『おはよう』
「今日の君の仕事は?」
『ジグゾーパズルだ。完成図は……満天の星空らしいね。そっちは?』
「新聞読み」
『いいな。僕はもうずっと読んでいない。音読してくれよ。それを聞きながら、パズルを作るからさ』
 僕はすぐさま麻の袋を引っ張って中から新聞を取り出す。
「いいとも、何新聞がいい? 毎日、朝日、産経、東京、と、もちろん読売もある」
『一番、面白そうなものを頼む。完成させたものを代わりに君にあげられたらいいんだがな』
「今日中にできるのか? 君はなんだか不得意そうだ」
 僕たちは壁越しに笑った。
 面白そうなもの、と言われてそれぞれを見比べる。丁度広げた数誌が一ヶ月前のもので、一面の記事が全て同じであることに今更に気づく。
「なぁ、北海道で、クローン人間がクーデータを起こしたそうだよ」
 壁越しの声が聞こえなくなる。僕は壁に寄りかかった背中を離して少しだけ待つ。
 隣の彼の呼吸すら感じることが出来そうなほど静かだ。
「……詳しく読む?」
『いや、いいよ。ひと月前なら……結果も……でているかもね。しかしあれだな。星のパズルっなんてどこにどのピースを置いても間違っていない気がす―』
「僕たちはなめられているね。こんなもの、普通、検閲とかしてさ、見せないだろう。……あ、……結果の新聞……発見したよ」
 ――北海道クローン無事殺処分 移植出荷に影響無し――
『……だいたいわかるから読まなくても、いいよ』
 僕たちは毎日毎日、どうして、何をしているんだろう。
 ただ暇つぶしだけを与えられ続け、ただ日々を繰り返し続け、どこに向っているんだろう。
 夜、寝る時に涙が出るのはなんでなんだろう。
 窓の外で誰かはちゃんと生きているのに何をやっているんだろう。
 何がしたいんだろう。
 何が出来るんだろう。
 この気持ちはなんだろう……。
 何が何を何で、どうしたらいいんだろう。どうしたら……。
「……う……うう……」
『……泣いているのかい?』
 窓から空が見える。新聞紙に落ちた涙が紙を柔らかくしていく。
『なぁ泣くなよ。今日中に、絶対今日中に完成させてやる。流れ星は……願いを叶えてくれるんだ』
 僕は何もしていない。だけどのうのうとそれを受け入れていた。
『僕が今日中に星空を完成させたら……抜け出さないか? 一緒に』
 僕は、僕たちは、まだ“何もしていなかった”だけなんだ。
 夜になる頃に彼は、完成させてくれるかな。
 本当の星も、一緒に見れたら……。





 今回は民生です。歯の歌とか菌の歌とか性転換の歌とか色々歌っていますが、ちゃんと民生も歌うんです、『青春』を。民生のアルバムはどのアルバムも最後の曲がなんだか、うまくいえませんが、すごいのです。その上手く言えない感じの凄さを、この小説でも、ちょっとでもいいから、感じてもらえたら……民生の歌のように、格好良くなっていればいいけど……。まぁ、こんなに暗い歌ではないんですけどね(笑)。
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by tokyo_tenjiku | 2009-05-27 12:38 | 勝手にロックンロール