東京天竺とは、文化学院小説ゼミの有志で始めた同人誌。小説やエッセイ、漫画などを掲載。詳しくはカテゴリ『東京天竺1号』『東京天竺2号』ご覧下さい。


by tokyo_tenjiku

第1回突撃!隣のフェティシズム/『花を添える』

『花を添える』 福島侑子




思えば、今までの人生でなにかにハマったという経験がない。
もともと飽きっぽく根気もないので、長く一つの事に集中できない。
昨日大事だったものが、今日どうでもよくなる事もしばしば。
時々何かの拍子でテンションがあがり「これいい!」と思ったものや考えも
お茶を一杯飲み終える頃には信用できなくなったりする。

だから「ご当地キティ」を段ボールいっぱいに集めている人とか
明け方まで海外ドラマのDVDを観ちゃって眠そうにしている人とかを見るにつけ、ひどく羨ましがってしまう。

いいないいな。

何かにハマっている人とじゃあねと別れ、虚しい気持ちをリセットするために、電車を数本乗り過ごす覚悟で、私は一人喫茶店に入る。
「アタシはきっと、何かに夢中になる能力を母のお腹に置いたまま生まれてきてしまったんだなぁ」
何度となく思ってきたことをまた呟きながら、ふと自分の手元を見ると、いつの間にかストローの袋で花を作っている。

まず袋の先っぽを、細かく(6つを目安に)縦に裂いていく。この部分が花びらになる。
指先でクルクルと紙花びらの先端を丸め、八分咲きくらいの上品な花弁を作りあげる。
そして、袋の下の方を、5センチほど切り取り(これは後で葉っぱの部分になる)つぼみの膨らみをのこし、残りをこよりにしていく。
これが茎になる。このときのポイント。茎部分に一カ所、葉っぱを差し込む為の切れ込みをいれるのを忘れないこと。
蕾のすぐ下あたりに切れ込みを入れるのが一番、あとあとのバランスが良くみえる。
こよりができたら、その切れ込みに、葉っぱになる紙を差し入れ、左右に飛び出た部分を葉の形に整えたら、完成だ。

完成したそれを、左手に持って眺めながら、半分近く残っているアイスロイヤルミルクティーを飲み干す。
ずずっ、と飲み終えたら、作った花をストローに指して、スマートに返却棚へ。
それを見た店員さんの反応を確認するのは御法度。
ストローから飛び出た花は、あの店員さんを微笑ませただろうか、と想像しながら、店をあとにする。(実際はたぶん、すぐポイだろうけど。・・・むしろ分別的面倒臭さで軽く舌打ちかもしれない)

最近、高校の同級生と喫茶店にはいる機会があった。
席に着くなりストローの袋をいじくりまわす私をみて、友人は呆れた顔をした。

「それ、まだやってるんだ。よく飽きないねぇ」

知らぬ間に、かれこれ十年近く、私は喫茶店に花を添えて生きてきたらしい。
ならば死ぬまで続けていこうなんて思わないが、将来私が、ストローが袋に入ったまま出てくる喫茶店に足繁く通うおばあちゃんになっていたら、誰かに「それ、昔から好きだったよねぇ、まだハマっているの」と呆れた顔で言ってほしいと思う。


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いかがでしたでしょうか?さて、次回のゲスト紹介を福島さん、お願いします!


”この方の文章を読みたい! というワケで
 バトンは大坪覚さんに渡します。

大坪さんとお話をしていると、いつも「どうやら、この世界には楽しいことや素晴らしいものが沢山あるらしい!」と、わくわくした気持ちになります。

それはきっと大坪さんが、世界にむける興味エネルギーのものすごく強い方だから、
隣にいる私にも、そのエネルギーが流れ込んできているのではないか、と勝手に思っています。”


という訳で、大坪覚さんが2回目のゲストとなります!大坪さんは『TOKYO博物館ガイド』の著者であり、現在ではフリーライターとしてだけでなく、文化学院の講師としても活躍されている方です。一体どんなフェティシズムを書いてくれるのか…?今から楽しみですね〜。

更新は3月12日を予定しています。お楽しみに!


なお、引き続きお買い上げいただいた方からtokyo_tenjiku@excite.co.jpへのご連絡をお待ちしております。こちらをご覧下さい。
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by tokyo_tenjiku | 2010-02-26 16:04 | 突撃!隣のフェティシズム