東京天竺とは、文化学院小説ゼミの有志で始めた同人誌。小説やエッセイ、漫画などを掲載。詳しくはカテゴリ『東京天竺1号』『東京天竺2号』ご覧下さい。


by tokyo_tenjiku

第3回突撃!隣のフェティシズム/『君を切らせてね』

『君を切らせてね』伊藤未樹




チーズ・アボカド・サーモン

この三つがそろった食卓は完璧である。
完璧であるっていうか、パーフェクト。
特にアボカド。
アボガドじゃないよ、avocadoだよ。
これが私のフェチである。

昔、知り合ってからそんなに日がたっていない人たちと親睦を深めようと飲みに行ったら、「ほら、アボカド料理あるよ! 頼む?」とメニューを見せてくれた人がいた。
「あれ? 私、この人にもアボカドを好きな事を打ち明けていたっけ? いつの間に?」
という感じで、無自覚にアボカドへの愛を垂れ流している私だが、そのアボカドにハマッたきっかけはテレビ番組で、わさび醤油で頂くアボカドが「トロの様でおいしい」と紹介されていた事だ。
初めてアボカドを食した時は、家族全員、追熟が必要なものだと知らずに食べてしまったので、青臭くていまいち美味しい物ではなかった。
でもトロの味がするんだろ?
なら、今度は追熟が必要という知識も持っている事だし、もう一回くらい食べてみてもいいよね。
というわけで改めて食べてみた感想は、「トロは言いすぎだけれど、海苔も一緒にして食べると確かにうまい!」でした。

世のアボ好きさんは、結構こんなプロセスを踏んでいるんじゃないでしょうか。
第一印象がちょっと悪い方が、後の印象が反動で良くなるという少女漫画現象みたいな感じで。

アボへの愛が次第に高まり始めた頃、ネットで「アボカド」を検索して知ったのが、アボカドを育てている人が沢山いる事!
2007年8月29日。
私はとうとうアボカド栽培を始めた。
すでにその日から二年と七ヶ月がたとうとしている。
『植え替え』という、鉢植えで育てている植物が避けて通れない儀式もすでに一度行っている。
もう“植物に話しかける”という行為にも照れがないどころか、最近アボさんとの関係は倦怠期に突入していて、かける言葉がどこか上の空だ。
室内で育てているので定期的に葉に積もる埃を拭いてやらないといけないのだが、その回数も減っている。
それでも、社食でアボカド関連のメニューが出ると「今日は安いわかめ蕎麦で良いや」とか思っていたはずが、気づくとアボカドのメニューを頼んでしまっていたり(わかめ蕎麦より100円以上高くても)するので、アボに対する愛情が決してなくなったわけではないのだが。
私は、この『食す物を愛でている所』も気に入っている。
実際にアボカドを実らせるには、地面に植えて最低でも三メートル以上に育てなければいけない(アボカドは大きいもので25メートルにも成長する)ので、鉢植えで育ている限り、我が家のアボさんが食べれる実をつける事は不可能なのだが。
「私はいつかお前を食べるのだ」
と、話しかける時だけは以前と変わらない気持ちがこもっている気がする。
これは、紫の上を育ててきた光源氏みたいな気持ちなのだろうか。

それから、「あんまり大きくなるなよー。部屋で育てられなくなるから」と声をかけて葉を撫でるのも、お気に入りの愛で方だ。
春の嵐が吹き荒れたりして気温がかなり暖かくなってきたこの頃は、「いつ剪定しようか?」というのも悩み所……いや、愉しみかもしれない。
アボさんを良く観察したら、下の方から有望そうなわき芽が出ていたので、近いうちに94センチある身長を40センチほどに縮めてやろうかと予定している。
アボカドは常緑樹だから葉を落とす事はあまりないのだが、古い葉が流石に枯れてきているし、わき芽をノビノビ伸ばすためにも、これも思い切って何枚か取ってしまおう。
春になったら女性が髪を切り落とす様に、君を切らせてね。

そんなアボカドとの関係が長く続いていって、いつか嫁入り道具の一つに入れられればと思っているのは、世界でも私くらいなものだろうか。
恐らくこのブログが更新された頃、私はアボカドの枝を切っている。

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いかがでしたでしょうか。ちなみに私は伊藤さんがアボカドを育てている事は知っていましたが、それでもこのフェティシズムを読んで発見がありました。アボカドの事をよく知らない方ならさらに新たな発見があったのではないでしょうか。さて、次回のゲスト紹介。


「『フェティシズム』といえばこの方!というのは、私だけじゃなくて、仲間内の共通認識だと思う。最終兵器をかなり早い段階で出してしまったような気もするが(まだ四番目なのに)、私にはとても真似できない、濃く濃く煮詰めた特濃ソースの文章をいつも提供してくれる彼女が、このテーマでどんな物を書いてくれるのか、正直に言って早く知りたかったんです。ドロドロなのか、意表をついてサラサラなのか、菱井真奈さん、次をよろしくお願い致します!」

というわけで、2号でイチオシ小説を書いてくださった菱井真奈さんがゲストです!更新日は4月9日です。お楽しみに〜。


なお、引き続きお買い上げいただいた方からtokyo_tenjiku@excite.co.jpへのご連絡をお待ちしております。こちらをご覧下さい。
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by tokyo_tenjiku | 2010-03-26 13:40 | 突撃!隣のフェティシズム