東京天竺とは、文化学院小説ゼミの有志で始めた同人誌。小説やエッセイ、漫画などを掲載。詳しくはカテゴリ『東京天竺1号』『東京天竺2号』ご覧下さい。


by tokyo_tenjiku

第4回突撃!隣のフェティシズム/『公然の花園』

『公然の花園』菱井真奈



 
 六本木にしか売っていない香水を買いに行った。美しき女性店員はとても丁寧にその商品を説明してくれた。スイートピーがベースで作者が愛娘をイメージして造ったとか、六本木にしか売っていないから皆さんひっそり何十年も使用される方が多いんですよ、とか。しかしこの話に相槌をうちながら、わたしの購買意欲は塩酸かけられたセイタカアワダチソウのごとく萎れていった。最初から買う気で来たのにもかかわらずだ。トークが悪いのではない。むしろたいへん弁舌豊かで商品のよさが伝わる。私は目線を彼女の瞳に固定。しかし本心でガン見していたのは視界の端。彼女の整った顔立ちの中。やや太めの鼻梁の終着点、鼻穴のサイドからモッサリ溢れる鼻毛。モッサリである。一本じゃない。そして一朝一夕でもない。毛並み美しく、先がシャープに先細っている。この方はアカ抜けたナチュラルメイクをしていた。朝昼晩と鏡を見ているのだ。黒が見えない色盲? 遠目から見えないとふんでいる? 反骨精神?

 いや、ワザとだと、私は直感した。

 彼女のバックには精力的なサディストの商社マン(妻子持ち)がひかえているに違いない。ワキ毛伸ばして陰毛剃るなんて古典的なプレイでは満足できなくなった彼はさらなる羞恥を欲求する。前者も恥ずかしいが、あくまでも二人の間の秘密だ。それが鼻毛の場合どうだ。同僚・客・親兄弟・友人・街ゆく人みなに丸出し。その淫靡さは公衆でハダカになるより理解されない。下手すればヒューズ飛んでるのかと疑われる。彼は逢うたびに「ちゃんとしているようだな」と言ってシティホテルのバーで女の鼻毛をキュッと引っ張る。心得たもので、苦痛スレスレの力加減である。女は「アっ」声を上げて目に涙を浮かべるが下半身はおかゆが煮えたぎっているという体だ。

 私は¥8400のオードトワレを彼女から買った。

 ところで、付き合っている男が、会うたびに鼻毛が出ている。鼻毛カッターかシェーバー買え、と毎回言うが一向に改善されない。しかたないので鼻毛に欲情する脳モードにする。コノ男ハ凡庸ナ女ゴトキノ命令ニ従ウ哀レナ子羊。セーターでも編んでやろうか。





いかがでしたでしょうか。第2号の小説『蜜経新聞にてアーバンライフ』の作者です。小説にも通ずる世界観が滲みでておりました。最後のセーターにデレが出ててそこが非常に新鮮。さて、次回のゲストはこの方〜。


「次回は、演劇の映像と映画を作る仕事に携わる松澤のぶひろ氏です。最近こゆい貫禄が付いた。世界をとる予兆。あまたの老若男女をトリコ殺しにした柔和な笑顔の裏にどんなヘチが隠されているのか、乞うご期待。」

う〜む、気になります。次回の更新日は、4月23日です!
お楽しみにぃ。

なお、引き続きお買い上げいただいた方からtokyo_tenjiku@excite.co.jpへのご連絡をお待ちしております。こちらをご覧下さい。

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by tokyo_tenjiku | 2010-04-09 13:45 | 突撃!隣のフェティシズム