東京天竺とは、文化学院小説ゼミの有志で始めた同人誌。小説やエッセイ、漫画などを掲載。詳しくはカテゴリ『東京天竺1号』『東京天竺2号』ご覧下さい。


by tokyo_tenjiku

第6回 突撃!隣のフェティシズム/「ろ過されて美化されて嘘のようになって、消えそうになるもの」

『ろ過されて美化されて嘘のようになって、消えそうになるもの』新井美希奈





年齢を重ねれば重ねるほど、連なっていく記憶は重みを増してゆく。
過ぎた時間ばかりを日々考えているというわけでもないが、気がつくとぼけーっとしていることが多いような私はおのずと過ぎた時間のことを思い返している、そうして思い出す事柄は、過ぎ去った今、思うからゆえに、恍惚の境地に意識を追いやる、たとえ、その事柄が「今」であったときに、殺伐とした感情を渦巻かせていたとしても、どこか幸ふくにも似た感情を、今だからこそ、引き寄せる。

私は「おもいでフェチ」である。
過ぎた事柄の中に含まれる人やものに、未練や後悔を感じているわけでは決してなく、日々のあらゆる事柄が、形を変えてゆくこと対しての愛おしさ(愛しい、ではない)が思い返すことの頻度を短くしている。歳月によって、ろ過され続け、きれいな形として残ってゆく記憶さえ通り過ぎて、消えていってしまうのではないだろうか、と、ふと思う。
私はいつまでたっても子どもじみていて、変化することがとてもこわく、苦手である。幼少期そういった感情に言葉を知らなかったときは、かんしゃくを起こし、咽び泣いて周囲の人らを困らせていた。けれど、23歳である今、私はかんしゃくを起こさない、代わりの言葉や安心の材料を知っている。
いつまでもおなじであればいいのに、と、起き抜け、あるいは、寝しなに溢すことがある。顔のない人の腕と体温が溢れたそれごと私をくるんで、うやむやにする。その事柄も、連なるおもいでの一つになってゆくことを、伏せたまぶたの裏側でも確かに、見知っている。

尾崎翠「花束」やダーチャ・マライーニ「思い出はそれだけで愛おしい」などの中に、私の思うフェチシズムが書かれているように思う。

尾崎翠/ちくま文庫
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480425041/

ダーチャ・マライーニ/中央公論新社
http://www.chuko.co.jp/tanko/2001/02/003113.html



新井さんは東京天竺に小説書いてます。(1号は『仰向け金魚』2号は『ミルピスのおねいさん』)それ以外でも授業で何作か小説を読んだのですが、新井さんの小説の登場人物は、すきとおった、すーっとした芯の強さ(弱さかもしれない)を持っていて、それは一見か細いように見えるけれども、強靭で絶対に(外部からの影響で)曲げられたりしなさそうなのです。それにしても、文章の色が違ってみなさん面白いなぁ。滲み出る滲み出る。さて、次回のゲストは。

「黒髪おかっぱがきっと世界でいちばん似合う女のこです、
 そして、しっかり芯の通った女性です。
 見据える先に描いている風景に、自らきちんと色を塗れる、そんな人です。
 歌をうたいます、ギターを弾きます、その姿はたくましいです。」

というわけで、次回ゲストはシンガーソングライターの古澤ひかりさんです!1stアルバム「バラは咲き」も発売中だよ!現在は、子育て奮闘中でライブ活動はなさってませんが、My Spaceで曲を発表しております。

古澤ひかりさん 公式HP
My Space

ぜひ!!次回更新日は、5月21日です〜。しばし、待つがよいっ。
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by tokyo_tenjiku | 2010-05-07 16:26 | 突撃!隣のフェティシズム