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東京天竺とは、文化学院小説ゼミの有志で始めた同人誌。小説やエッセイ、漫画などを掲載。詳しくはカテゴリ『東京天竺1号』『東京天竺2号』ご覧下さい。


by tokyo_tenjiku

第17回突撃!隣のフェティシズム

『宇宙的ダイナミズムにおけるフェティシズムの考察』 松下正樹





自信があるから思い切り表情をくずせるんだな、と思ったのが最初。
君は、僕がそうするように、鏡の前で微笑む練習をしたりはしない。僕は、どうしてイジメられるんだろう、どうしてモテないんだろう、と悩みながら、鏡の前で微笑む練習をする。そうして、シャンプーが目に入る。
 
 君が笑うと、顔全体がやわらいで、整った造形がまるで配列を変えたようになる。
 屈託のない笑顔、とよく人は言うけれど、君に屈託がないわけじゃない。屈託がない人間になんて、むしろ興味はない。君は屈託を笑顔から追いやる、そんな力を持っている。

 君が白い歯を無防備に見せ、ひなたの猫のように目を細め、小刻みに肩と髪を揺らし、胸の前で手を叩く、そのたびに僕は心臓がとまるくらいドキドキして、もしかしたら僕は変態なのでは、と思う。いや、そうにちがいない。きっと僕は二十一世紀最大の笑顔フェチなのだ。
 
 君の小ぶりな胸や、白いうなじや、スラリとした脚よりも、僕は君の表情のダイナミズムに、たまらなく悶々とする。独りベッドで、君が顔をくしゃりとさせて笑うの妄想するとき、僕はもうゴロゴロと回転してしまう。うほう、とかワケのわからない声をあげて。
 
 単なる恋だよ、それは、なんて僕にアドバイスする奴がいる。でも、そんな言葉は僕の耳にはちっとも届かなくて、僕が言いたいのはつまり、僕は二十一世紀最大の笑顔フェチで、君の笑顔は太陽系いちばんの造形美だということ。





【次回ゲスト紹介】10月29日更新予定。
大橋洋介氏は、いつもの超インフレ麻雀の習慣でドラ表示を2枚してしまう困った人です。彼のつくった男女の屈託を歌う曲は、サビの歌詞が「ラーメン食いたい」でした。ともあれ、久しぶりの彼の文章が楽しみです。
by tokyo_tenjiku | 2010-10-15 23:15 | 突撃!隣のフェティシズム